【書評】頭のいい説明「すぐできる」コツ #ビジネス書を楽しもう
はじめに
せーのでございます。
誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は13日目です。
バックナンバー
- Day1: やる気が上がる8つのスイッチ
- Day2: 自分を操る超集中力
- Day3: なぜ、あなたの仕事は終わらないのか
- Day4: 秋本治の仕事術
- Day5: 遅読家のための読書術
- Day6: 読みたいことを、書けばいい。
- Day7: 影響力の武器
- Day8: 会社では教えてもらえない 仕事が速い人の手帳・メモのキホン
- Day9: なぜかミスをしない人の思考法
- Day10: 頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?
- Day11: 僕がコントや演劇のために考えていること
- Day12: 習慣が10割
本日は吉井雅之著「頭のいい説明「すぐできる」コツ―「1分間で信頼される人」の話し方」です。
これまで「読み方」「書き方」とご紹介してきましたが、今回は「話し方」それも「説明の仕方」に絞って解説した本をご紹介します。
仕事をする上で切っては切れない要素、それが「説明すること」です。
特にエンジニアは専門的な知識がベースとなる仕事である一方、要素が多岐に渡ったり、クライアントが非エンジニアである場合も多いので「いかに自分の仕事を説明できるか」というのは仕事をする上での大前提でもあり結論でもあるような、大事な能力です。
今回はビジネスに置いて「説明」する意味、理解してもらいやすい説明の方法などをご紹介します。
説明とは相手が行動を起こすためにお願いすること
この本によると、ビジネスに置いて説明する目的とは「仕事で結果を出すこと」と定義しています。
自分が作業をすることのみで完結するのであれば、説明は必要ありません。
相手に対して何かしらのアクションをしてほしいから、人は説明をするのです。
アクションとは例えば「提案を認めてほしい」「作業に協力してほしい」「仕事の評価をしてほしい」などです。 説明とは、これらのアクションを相手にしてもらうための「お願い」である、とこの本は言います。
つまり、説明は相手が行動を起こして初めて成功、と言えるわけです。
相手に行動を起こしてもらうには
- 自分の言いたいことを相手に「伝える」
- 相手に自分の意図が「伝わる」
- 相手がその意図を「納得する」
というプロセスを通じて初めてアクションを起こすことになるのです。この本では「伝える」ためのテクニックと「納得する」ためのテクニックを分けて説明しています。
説明の順序は「大きな情報 => 小さな情報」
説明する際の大前提は「聞き手が聞きやすい順序で話す」というものです。
この「聞きやすい順序」とは、言い換えると「聞きたい順序」となります。
例えば新しい技術を仕事に使う説明をするとします。
もし聞き手が同じエンジニアである場合「どうしてその技術を選んだのか」「その技術を使うとどれくらい作業はラクになるのか」「その技術はどう使うのか」というような順序が想定されます。
聞き手がマネージメントだとすると「クライアントに対するメリットはなにか」「その技術はコストにどの程度影響するのか」「新たに必要なリソース(人、機械など)はあるのか」という順序になるかと思います。
このように聞き手によって話す順番を変える、ということが重要です。
まず客観情報を説明し、その後主観を説明する
説明を行う時に大事なことは「聞き手と意識を共有すること」です。
最終的には相手には自分がお願いする内容をしてもらわなくてはいけません。そのためにはまず「何が起こっているのか」を把握し、「どう思っているのか」をその後共有することで、「この人はなぜこの事を説明しているのか」が明確に理解できるのです。
例えばメンバーが一人増える、という事実についても、「その人のためにPCや事務用品の準備をする人」「その人と仕事を分担する人」「チームのマネジメントをする人」「予算を統括している人」では、それぞれに、その事実を受けて、やること考えることが違っていて当然です。
この「出来事+解釈」というセットがメッセージの意図を効果的に伝える基本、とこの本では指摘しています。
そして最後に「お願い」をするのだそうです。
- この企画の検討に引き続きご興味をお持ちいただいてるようでしたら、今期、継続調査のために、予算を50万ほど追加していただけないでしょうか?
- この分野に詳しい人をご紹介したいので、一度あっていただけないでしょうか?
- 別の部署にこのプロジェクトに参加してもらいたい人がいるのですが、課長に間に入ってもらって調整をお願いしてもいいでしょうか?
など、「結局自分はどうしてほしいのか?」「相手は何をしたら良いのか」を聞き手が確認できるように言葉にする、ということです。
これを忘れる人がとても多いのだそうです。確かに説明をする時「相手に何かを頼むんだ」と考えたことがなかったので、こういう締め方をすることはなかなかないかも知れませんね。「お願い」や「お願いの理由」がつまり「結論」となる、とこの本は言います。
「自分は目の前の相手に、何をお願いしようとしているのか」を意識することで、話が整理されてくるのだそうです。
聞き手のペースを揃える
ここまで「話す順番」について主に書いてきました。
では実際に「話す内容」についてはどうでしょう。これは「余計な部分を取り除く」ということに付きます。
これは「相手にとって要らない情報」をなるべく取ってしまって、必要なものだけを残すことです。
「要らない情報」は「背景情報」であることが多いです。ブログなどでは状況説明のために客観的なデータを先に書くことが多いのですが、こと説明となると、例えば「展示会に行ってどの技術が使えそうと思ったか」という報告を上司にしている時に「この展示会は幕張メッセで毎年数万人を動員している展示会で〜」みたいな情報は冗長となりますので、全てカットするのがスッキリするということです。
また、前段にて「聞き手が聞きたい順番に話す」というのがありましたが、これに関連して「聞き手にとって重要度の低い背景情報をカットする」ということが聞きやすい情報として耳に入りやすくするポイントなのだそうです。例えば先程の展示会の話でいうと「どの技術が使えそうと思ったか」という話をしようとしているので、使えそうな技術が展示されているブースの話が最も重要度が高いわけです。それに比べて、例えば全体では機械学習系の展示が多かった、とか、最新技術でホログラムが使われていた、というような情報は、今回の話に関しては低いです。となるとその部分の背景(色々な企業が機械学習を扱うようになってきた理由、など)はカットして構わない、という判断が働きます。
これらを実際に話す際に「サウンドバイト」というテクニックがあります。これは長文を使わず、短い言葉を積み重ねる事によってメッセージやイメージを端的に伝える方法です。「今週から札幌は一気に寒くなり、毎日最高気温が氷点下となる真冬日が続くので、特に朝晩は暖かくしてお過ごしください。」という文章があった場合、「今週から札幌は一気に寒くなります。毎日真冬日が続きます。暖かくしていただきたいです。特に朝晩はご注意ください。」というように一つのセンテンスを短い文に区切って連ねることで、相手の理解が早まります。
相手のスケジュールを把握した上でエレベータピッチで説明
説明をする人間と説明を聞く人間では意識に大きなギャップがあるそうです。
それは「説明をする人間は理解して欲しいので時間をかけて丁寧に説明しようとするが、説明を聞く人間は時間がないので簡潔にまとまった話を聞きたい」という理由です。
短く簡潔にまとめる、という作業は相手の時間を奪わない、という気遣いの現れでもあります。この「忙しい人に短時間で話をまとめる」手法をエレベータピッチと言います。エレベータピッチとは、エレベータに乗っている僅かな時間で自分の提案を伝える、という意味です。
ここで重要なポイントは「その場で話をまとめない」ということだそうです。
短い時間でまとめるためには
- 話し手の説明
- 聞き手の返答・確認
という2つのステップを短い時間でこなす必要があります。そんな時に役に立つテクニックが「ポイントメール」というものです。ポイントメールとは話す内容を改めて論点にまとめているメールのことです。つまり話とメール、2つの手段で説明を行う、ということです。
短い時間で相手の言っていることを理解し、判断し、回答する、というのはプレッシャーがかかります。なので、説明では「問」や「お願い」をメインとし、回答や確認はメールでもOKです、と伝えるのがエレベータピッチの特徴です。
ポイントメールですが、この本では
- リマインド言葉: ◯◯の件ですが、、、
- 現在地: 現在XXXの状況です
- 方向性: 今後△△となる予定なので、◻◻しようと思っています。また動きがあればお知らせします
という流れで書くと簡潔にまとまるそうです。リマインド言葉=過去、現在地=現在、方向性=未来、と時系列に並べることによって読んだ人の頭の中が整理されるのですね。
聞きやすい説明のキモは「選択肢」「ビフォーアフター」「箇条書き」
話す内容、話す順序がわかってきたところで、最後は「話し方」、つまり言葉に説得力をいかに乗せるか、というお話です。
まず最初のポイントとしては「人間は選択肢があったほうが答えやすい」ということです。
質問の種類には2種類有ります。
- オープン・クエスチョン: 相手に自由な回答を考えてもらう
- クローズド・クエスチョン: 限定した選択肢から相手に返答してもらう
相手にとって見れば回答が限定されていたほうが考える必要がないのでラクです。また、提案する側も回答を限定することで、自分の想定に近い回答が返ってくることになります。まさにwin-winの方法です。
また、相手にお願いをする際は、お願いを聞いてもらった結果どうなるのか、というイメージを伝えることが大事です。これをビフォーアフターと言います。ビフォーがお願い、アフターがお願いの結果、ですね。
特に相手に対してある程度の負担をかけるようなお願いである場合、それを自分が聞いたらどういう結果が得られるのか、というイメージを共有することは大事です。「この機材が必要なので購入したいです」ではなく「この機材があると作業効率があがり、納期が1週間ほどは縮められそうです。購入してよろしいでしょうか」という言い回しですね。これは前回の話で言う「右脳で成功イメージをさせることでポジティブな反応を引き出す」という部分と共通するかと思います。
最後に、説明の際は大事なポイントを箇条書きにして見せながら説明したほうがいい、ということです。
「仕事で結果を出す」説明、というのは目の前にいる人が納得すればOK、とは限りません。
その人が動いて他の会議を通してもらう、さらに上司に説明してもらう、本人に何かしらのアクションを実行してもらう。
このような動きをとってもらうためには「聞き手がメモしやすい伝え方」を心がける必要があります。
それは「視覚的に見せる」という方法です。
特に「数字」「固有名詞」といったキーワードは視覚的にポイントを見せたほうが良い、とこの本は言います。文字は最低限の単語に限って、キーワードが際立つ形にする、ということですね。これはプレゼンの基本だったりします。最近では東京都知事の会見でよくフリップ持って話しているのを見ますね。
上司のスケジュールを確認する
説明することは、相手に何かをお願いすることだ、というお話をしてきました。
では相手がお願いを聞いてくれるようになるには何が大事でしょう。
簡潔さ、聞きやすさ、成功イメージ。色々な要素をご紹介しましたが、最も大事なポイントは「信頼関係」だとこの本は指摘します。
人間関係が良好で、聞き手が自分をある程度信頼してくれる場合、説明がもっとも入りやすいわけです。
信頼関係を構築するには、日々コミュニケーションを取り、情報を共有し、結果を見せていくのが良いですが、手早く相手を信頼させる一つの手段として「その人のスケジュールを事前に確認しておく」というものがあります。
相手はその日どの時間が空いていて、どの時間なら話ができるのか。これを把握しておくことで相手への気遣いができるようになります。
そんなタイプの人は「部長は今日、いないの?」などと部外の人に唐突に聞かれても、何も見ずに「今日は朝から外出ですが、夕方には戻ってくる予定です」という具合に答えることができます。
直接一緒に働いていなくても、このやり取りだけで、その人が信頼されるタイプの人であることがハッキリ伝わります。
相手の立場を想像して、なるべく相手が賛成しやすい方法でアプローチすることが、説明が成功する秘訣なんですね。
まとめ
以上、今日は「頭のいい説明「すぐできる」コツ」をご紹介しました。
単純に「説明」という域を離れて「説得」や「依頼」といった分野にまで渡っているノウハウが詰まっていました。
「話し方」には「理解のしやすさ」と「納得のしやすさ」の両面を考えて説明する必要がある、と非常に勉強になりました。
それではまた明日、お会いしましょう。